某日午後のこと。
この日は予定していた手術が中止となり、久々にヒマヒマな午後です。
天気もいいし、今日は早めに帰って、買い物にでも行こうかなあと思っていたところ、
ピリリリリリリ、ピリリリリリリ。
突然PHSが反応。内科の阪東先生からです。
俺「はい、はくこうです。」
阪「あ、はく先生、いま大丈夫?」
俺「はい、大丈夫です。」
阪「今ってヒマ?」
俺「まあヒマと言えばヒマですが。。。」
阪「いま救急隊から連絡があってね。」
俺「はい。」
阪「もうちょっとしたら重傷者が多数同時搬送されてくるらしいんだ。」
俺「は!!!!」
阪「なんかCPA(心肺停止)も複数いるらしいのよ。」
俺「!!!」
阪「はく先生、救急外来手伝ってくれない?」
俺「はい、行きます!!!!」
阪「ついでに手が空いてる研修医の先生も集めてくれない?」
俺「わかりました!!!!」
全力ダッシュで医局・研修医ブースに駆け込み、
俺「重傷者多数搬送!!!!手が空いてる人は救急外来集合!!!」
その場にいた同僚ケン先生、後輩トシ先生が瞬時に反応。
3人で全力ダッシュで救急外来に走ります。
救急外来には内科・阪東先生に加え、外科の畠山先生、耳鼻咽喉科の瀬川先生が待機中。
阪「これで研修医の先生3人を加えてドクターは6人。」
瀬「看護師さんは足りてる?」
看「いま北病棟3階から応援が来ます。南病棟2階にも応援要請してます。まずは6人。」
瀬「そうか、とりあえず大丈夫そうだね。」
阪「とりあえず、子供の交通事故と、CPA(心肺停止)と、もう一人CPAが来るらしいのね。」
畠「じゃあ、子供の交通事故をやるわ。トシ先生、手伝ってくれる?」
ト「はい!」
畠「そういえばはく先生、子供のルート取るの得意だったよね?」
俺「得意ってわけでも(笑)。」
畠「とりあえず取ってくれる?」
俺「わかりました。」
阪「じゃあ、俺とケン先生でCPA一人目担当しようか。」
ケ「わかりました。」
瀬「じゃあ僕とはく先生でCPA二人目担当しましょう。」
俺「わかりました。」
全員マスクにゴーグル、黄色い防護コートを着用し終わったころに、
ピーポーピーポー…
キタ━━━━━━━━ッ!!
救急車到着口に出迎えるケン先生と俺。
救急車のドアが開き、患者さんが搬出されます。
救「81歳男性、突然意識消失、到着時CPA、CPR(心肺蘇生)継続中です!」
俺「一人目CPAか。ケン先生、とりあえず任せた!」
ケ「了解。次を頼む!」
俺「OK!手が空いたら手伝うよ。」
ケ「患者さん、Bユニットへお願いします。」
救「わかりました!」
心臓マッサージ継続されながら救急外来へと担ぎ込まれる患者さん。
阪東先生、ケン先生を中心に蘇生処置が始まりました。
ほぼ同時に
ピーポーピーポー…(←※1台目から4分後)
救「3歳男児、軽自動車と衝突、5mほど飛ばされたようです!」
畠「状態は?」
救「大泣きしてます。レベルはクリアでしょうか。バイタルも安定していますが…」
畠「うわ、右足これは折れてるな。」
救「ですね。。。」
畠「Fユニットへお願いします。家族の方は?」
救「今こちらへ向かっているそうです。」
全身血まみれで右足が明らかに変形した子供が目の前を通り過ぎていきます。
大泣きしてるので、それだけ元気なことには安心しつつ、
同じタイミングで応援の看護師さん到着。
看「北病棟3階から応援に来ました!」
看「じゃああなたはBユニットについて、そしてあなたはFユニットに。」
看「はい!!!」
ピーポーピーポー…
3台目キタ━━━━━━━━ッ!!!(←※2台目から5分後)
救「75歳男性、現着時CPAでしたが車内で脈、自発戻りました!」
俺「とりあえずCユニットへ!」
救「はい、1、2、3、よいしょ!」
看「モニターつけます!」
瀬「はく先生、とりあえず血ガスと採血をお願い。」
俺「OKです!」
鼠径部から血ガス用含めて15cc採血し看護師さんにお渡し。
現時点ではバイタルが落ち着いているところで一安心していたところ、
Bユニットから声が聞こえてきます。
阪「じゃあいったん心マ止めて。状態評価しよう。」
ケ「はい、いったん止めます。お・・・VFですね。」
阪「除細動しよう!」
俺の横にはちょうど除細動器が。
瀬「はく先生、こっちは安定してるからあっちのヘルプに!」
俺「はい!」
ガラガラガラっと除細動器をひっぱってBユニットへダッシュ!
俺「除細動器持ってきました!」
ケ「おう、サンクス。」
俺「看護師さん、濡れガーゼは?」
看「あります。装着済みです。」
俺「電源、チャージ…いったん離れてください!」
ケ「おk。」
俺「チャージ完了、周囲安全確認、みんなも離れてますね?3、2、1…」
バシュッ!!!!
・・・
ケ「お、もどった・・・か?頸動脈は触れるぞ。」
俺「橈骨動脈も触れるね。つーかすげーST上昇やな。。。」
阪「さっき循環器内科の先生を呼んだところ。もうすぐ来られるかな。」
循「あ、どうも。」
阪「あ、ありがとうございます。CPAで来ましてね。ST上がってますわ。除細動も1回してます。」
循「そうですか、厳しいなー。看護師さーん。」
看「はい!」
循「アンカロン使うわ。出しといてくれる?」
看「アンカロンですね。わかりました。」
循「ではこちら引き受けますので、ありがとうございました。」
とりあえずルート取れ司令が出ていたので子供交通事故のFユニットに向かいます。
看「ご両親到着しました。」
畠「とりあえず外で待っててもらって。現時点では命に別条はないって伝えておいてね。」
ト「やってみましたけど、ルート取れません。。」
俺「あ、来ました。」
ト「ルート取ってもらっていいですか?」
俺「おk。ジェルコ針あります?」
看「あります。」
俺「お、ここにあるね。んー・・・っと逆血確認、これでよしと。」
畠「お、ありがとう。小児科ローテートしてると上達するね。」
俺「仕事こればっかりでしたからね(笑)。」
ト「ありがとうございました。でも・・・緊急手術ですね。。。」
畠「そうやなー。完全に開放骨折だからな。。。とりあえず整形外科の先生呼ぼう。」
看「わかりました。」
その時Bユニットで急変。
循「心臓止まったな。PEAになっとる。心マ継続して。」
ケ「はい!1、2、3、4、5、6、7…」
循「ご家族は?」
看「外に待機されてます。」
循「説明しよう。」
看「はい。」
・・・
Cユニットの患者さんは緊急手術になるとのことでそのまま手術室へと搬送されていきました。
少し遅れてFユニットのお子さんも手術室へと搬送。
俺はCユニットの患者さんの手術麻酔を担当することになり、そのまま手術室へ。
Bユニットの患者さんは来院から40分後、死亡確認となりました。
人でも足りない中、重なるときは本当に重なるのが3次救急病院の怖いところです。
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